カラスウリ
- 2007/07/24(Tue) -
勝手口の外の、湿った石垣を通過したひんやりとした風が、肌に心地よい。
さやさやと室内の繁った葉っぱも揺れる。やあ、これはいい心もちだ、と、うとうとしていると、俄かに辺りが明るくなった。
ふと見上げると、天井から一面雨のように、真白く細き絹の糸のようなものが降りてくる。
それぞれが白銀の糸のごとく輝き、荘厳なこと、この上もない。
私の寝ている辺りにまで降りてきたので、そっと掴んでみると存外丈夫そうであった。
そのまま昇ってみる。さやさやと白い光の林だ。



ぼうっとしていると、天井の方にくしゃくしゃのレェスのような白い固まりがあちこちしているのが見えた。
起き上がってよくよく子細に見ると、どうもこの植物の花のようである。
白い花弁の周りに、まるでそれの吐息のような白い糸が絡んでいる。
夢の続きを見ているようである。それともこれが夢なのか。

                                      梨木香歩著 「家守綺譚」より
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ヒツジグサ
- 2007/07/06(Fri) -
池には今、小さな睡蓮が咲いている。ヒツジグサという名だそうだ。
よく付けたもので、未の刻になると律儀に花を開く。
この水草が最近、「けけけっ」とたいそうけたたましく鳴く。
ヒツジなら他に鳴きようもあろうに。




暇なので釣りをしていると、いつのまにか睡魔におそわれ、体が急にぐらりとした。
はっとして目を覚ますと、池の表で目だけが二つぎらりと光ったように思えた。
途端にヒツジグサが「けけけっ」と鳴いた。

                               梨木 香歩著 「家守綺譚」より   
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